オーバーヒートの原因は?修理費用の目安も紹介

オーバーヒートの原因と修理費用

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オーバーヒートとは、何らかの原因でエンジンの冷却機能が十分に働かず、エンジンが異常に高温になる状態をいいます。

温度が上がりすぎるとシリンダーガスケットの破損やメタル・ピストンの焼き付きが発生し、パワーダウンやエンジンの故障につながります。

エンジンは温度を適正に保つため、クーラントと水を混ぜた冷却水がエンジン内部を循環し、ラジエーターで冷やされる仕組みです。

冷却水の適正温度は約80度~90度となっており、100度を超えるとオーバーヒートの兆候が現れ、120度を超えると深刻なトラブルの原因になります。

目次

オーバーヒートは冷却系か潤滑系の異常が原因

オーバーヒートの原因は、冷却水不足など冷却システムの故障や、エンジンオイルの劣化または不足によるものがほとんどです。

なぜなら、エンジンの発熱は避けられないため、熱を運べる液体の特性を活かし熱を逃がしているからであり、その循環が滞ると温度が急上昇してしまうからです。

冷却水やエンジンオイルは時間の経過とともに劣化するため、定期的な交換や補充を怠ると本来の性能を発揮できず、オーバーヒートにつながります。

冷却系の不具合は冷却水不足が主な原因

冷却水は、エンジンの内部をくまなく循環して熱を奪い、ラジエーターで冷やすのが役割です。

そのため、冷却水が漏れて量が減ったり、水路が詰まったりすると、エンジンを適切に冷やせなくなります。

冷却系トラブルの原因
  • 部品の劣化で冷却水が漏れている
  • 冷却水の補充を怠り自然に減った
  • 冷却水の汚れによる目詰まり
  • ラジエーターキャップの劣化
  • ラジエーターホースの劣化
  • ウォーターポンプの故障
  • 冷却用電動ファンの故障
  • サーモスタット不良
  • ラジエター本体の損傷

冷却水が減る原因には、ホースやラジエーター本体からの漏れ、あるいはウォーターポンプの故障などがあります。

ラジエーターファンの作動不良は、冷却効果を下げエンジンと冷却水の温度上昇を招きます。

水路の詰まりは、古い冷却水によって内部にサビや不純物が溜まることが原因です。

エンジンオイルは潤滑だけではなく冷却の役割もある

エンジンオイルは、単に部品の摩擦を減らすだけでなく、エンジン内部の熱を吸収し冷却する働きも持っています。

ピストンやクランクシャフトといった高速で動く部品の熱を効率よく吸収し、エンジン全体に分散させることで高温になるのを防ぐのです。

そのため、オイルが不足したり劣化したりすると、冷却作用が低下して熱をうまく逃がせなくなります。

エンジンオイルはガスケットの劣化などによって少しずつ外部に漏れるか、内部の摩耗によって燃焼室に入り込みガソリンと一緒に燃えて減ることがあります。

長期間オイル交換をしていない車では、粘度が落ちて摩擦熱が増加してオーバーヒートしやすくなります。

オーバーヒートした車の修理費用は1万円~10万円程度

オーバーヒートの修理費用は、軽度であればラジエーターキャップやサーモスタット、冷却水ホースの交換で数千円から数万円程度で済みますが、冷却水漏れが原因でホースやラジエーター本体の交換が必要になると3万円から10万円程度かかります。

もし、エンジンの焼きつきや歪みが生じた場合はオーバーホールか載せ替えになり、修理費用は最低でも50万円以上、高級車ともなれば100万円を超える可能性があります。

オーバーヒート修理費の目安

作業費用
冷却水の補充千円~5千円
ラジエーターの交換・修理3万円~10万円
ラジエーターホース交換1万円~3万円
サーモスタット交換5千円~2万円
ウォーターポンプ交換2万円~8万円
電動ファン交換2万円~10万円
エンジンオイル交換千円~1万円

運良く初期の状態でオーバーヒートに気がつき車をすぐに停めた場合、軽症で済んでいれば修理代もさほどかかりません。

しかし、オーバーヒートを起こしたエンジンは何かしらの不具合を抱えることが多いため、念のため点検しておくことをおすすめします。

日頃のメンテナンスといっても運転するたびにボンネットを開けて点検するのは非効率でもあるので、定期点検などで整備士にチェックしてもらうのも一つの方法です。

オーバーヒートの症状と自分でできる対処法

オーバーヒートの初期症状であれば、エンジンを止めて冷やした後に車を動かすことはできます。

ただし、根本の原因を解決しない限り、すぐに再びオーバーヒートを起こす可能性があるので、早めの点検をおこなってください。

オーバーヒートの症状
  • 水温計の針がH(Hot)寄りになっている
  • 加速が鈍くエンジン回転数が不安定になる
  • エンジンが止まってしまった
  • ボンネットから白い煙が上がっている
  • 何かが焼ける匂いや甘い香りがする

オーバーヒートに気付いたら、車を安全なところに停車させてボンネットを開け、アイドリング状態で水温計が下がるか様子を見てください。

車を停める際は急停車を避け、道路脇や数百メートルの距離であれば駐車場を利用しましょう。

できれば日陰のほうがエンジンを冷ましやすくなるので最適です。

アイドリング状態にして水温計が下がってくれば、さほど重症ではなく、冷却水の量やラジエーターのキャップの点検で直る可能性が高いです。

水温計の針がH(Hot)寄りになっている

走行中に水温計の針が通常よりも高い位置を指し、「H」(Hot)に近づいている場合はエンジンの冷却がうまくいっていない可能性があります。

一般的な車両では針が真ん中付近で安定しており、そこから大きく上がることはほとんどありません。

しかし、針が徐々に「H」(Hot)の方向に動いていくとオーバーヒートの兆候です。

水温計の針が動く具体的な温度は、車種やメーカーによって異なりますが、目安は以下のようになります。

針の位置水温状態
中央80℃~100℃最適な温度
Hに近い100℃~120℃冷却系統に異常
Hを超える120℃以上完全なオーバーヒート

水温計がH寄りに動いていることに気づいたら、そのまま走行を続けるのではなく、一旦車を停めて元に戻るかどうか様子を見てください。

加速が鈍くエンジン回転数が不安定になる

オーバーヒートが進行すると、車の加速が鈍くなったり、エンジンの回転数が不安定になったりという症状が現れます。

これは冷却水の上昇に対してECUによるエンジン保護の制御が入っている状態です。

エンジン温度が高くなりすぎると、混合気が異常燃焼を起こす「ノッキング」が発生しやすくなり部品に負担がかかるため、点火時期を意図的に遅らせて、燃焼温度の上昇を抑えます。

さらに、燃料の噴射量を増やし、気化熱によって燃焼室やシリンダー内部の温度を下げる制御がおこなわれます。

スロットル開度やターボの過給も制限されるため、アクセルを踏んでも進まない感覚になるのです。

水温が下がればに通常の制御に戻りますが、根本的な原因があるかもしれないので、走行後に点検するようにしてください。

エンジンが止まってしまった

走行中に水温が上昇しエンジンが突然停止するのは、オーバーヒートがすでに限界を超えエンジン内部で深刻な損傷が進んでいる状態です。

エンジンの再始動は試みずに路肩に寄せてエンジンを切り、ハザードを点けてロードサービスでレッカーを手配してください。

オーバーヒートが原因でエンジンが停止する理由は2つです。

  1. 熱膨張によるピストンの抱き付き
  2. ガスケットが抜けて冷却水が燃焼室に入り失火した

「抱き付き」と呼ばれる現象は、冷却能力の限界を超えた高温によって部品が熱膨張し、ピストンがシリンダー内に固着して回転が止まってしまうことです。

一度焼き付きを起こしたエンジンは、冷却水の補充やファン修理といった対応では直らず、分解しての修理や載せ替えが必要になります。

修理費用も時間も多くを費やすことになり、オーバーヒートの症状を放置した結果として最もダメージが大きくなります。

ボンネットから白い煙が上がっている

ボンネットから白い煙が上がるのは、オーバーヒートで冷却水が高温の蒸気となりエンジンルーム内に放出されるためです。

冷却水が沸騰するとラジエーター内部の圧力が上昇し、一定の値を超えた時点でキャップの安全弁が作動して蒸気や冷却水が外へ排出されます。

ラジエーターキャップの本来の役割は冷却系統を加圧して冷却水の沸点を引き上げ、100℃を超えても沸騰しにくい状態を保つことです。

しかし、温度が過剰に上がれば弁が働き高温の水や蒸気が外に逃げ、その結果として白い煙が目に見えるのです。

何かが焼ける匂いや甘い香りがする

何かが焼けるような匂いは、エンジンオイルが焼けるときの特有の臭いです。

エンジンが異常な高温に達すると、ヘッドガスケットなどのシール類が熱で軟化してエンジンオイルがにじみ出ます。

漏れたオイルがシリンダーブロックや排気マニホールドに付着すると瞬時に燃焼して焦げた匂いを放つのです。

そのため、焼けるような匂いはエンジンの内部で深刻な問題が起きており、オーバーヒートが進行している状態といえます。

甘い香りがするのは、冷却水が漏れて蒸発しているためです。

一般的な車の冷却水(LLC:ロングライフクーラント)には、凍結防止剤としてエチレングリコールという成分が含まれています。

漏れ出た冷却水は高温のエンジンに触れて水蒸気となり、その際にエチレングリコール特有の甘い香りが車内に漂います。

ボンネットから白い煙がもくもくと出て甘い匂いがしてすぐ消えるなら、冷却水が沸騰して湯気になっている合図です。

白い煙やにおいがいつまでも残り鼻にツンとくる感じなら、オイルやゴムが熱で焼けている可能性が高いといえます。

冷却水の補充は自分でもできる

自分で対処できる方法としては、まず最初に冷却水の補助タンクに適量入っているか確認します。

補助タンク内の冷却水が全く空っぽだったら、補助タンクのMAX(またはFULL)のラインまで冷却水を補充します。

ただし、冷却水の代わりに真水を入れると内部に錆が発生したり、寒冷地で凍った時に真水が膨張して冷却ホースが破裂したりなど、後日トラブルになる可能性も。

どうしても専用の冷却水(クーラント)が手に入らないときは、応急措置として真水を入れて車を動かし、なるべく早くクーラントを補充しましょう。

続いて、ラジエターキャップを空けラジエター内に直接冷却水を補充します。

エンジンを十分に冷やして(30分~1時間以上)から作業してください。熱い状態でラジエターキャップを空けてしまうと100度以上の熱湯が噴出し火傷をします。

濡らした厚手のタオルや軍手などをラジエターキャップの上に被せて空けるようにすると、万一熱湯が噴出しても吸収してくれます。

ラジエター本体と補助タンクに冷却水を入れたら、エンジンを始動ししばらくの間(10分~15分)アイドリングさせて水温が上がらないか確認します。

同時にエンジンルームの下回りを見渡して、水漏れがないかも点検しておきましょう。

水漏れを発見したら整備工場へ入庫する

オーバーヒートでよくあるのが、冷却ホースの劣化による水漏れです。

冷却ホースの劣化による水漏れを起こしている場合、ポタポタと水のようなものが道路に落ちるため、すぐに分かるでしょう。

誤飲を防ぐために緑や赤に着色されているので、色が付着している個所を探せば水漏れしている箇所を見つけられます。

冷却水(クーラント)には独特の甘い匂いがあり、エンジンルームから匂いが漂ってきた場合は、ホースの劣化による漏れが起きている可能性が高いです。

水漏れのペースによりますが、走行中は水圧が高くなり吹き出すこともあるため、その場でレッカーを手配して近くの整備工場で点検してもらいましょう。

整備工場で修理が必要なオーバーヒートとは?

オーバーヒートを放置するとエンジンが壊れてしまい高額な修理費用がかかることになるため、以下のような症状が出たらすぐに整備工場へ持ち込んでください。

  • 水漏れを起こしている
  • 水温計の針がHを振り切り白い煙が上がっている
  • 冷却水を入れたがアイドリング状態でも水温が安定しない

上記のようなときは、サーモスタットやウォーターポンプ、冷却用電動ファン、ラジエター本体などの故障が考えられます。

自分で対処することはまず出来ませんから、すぐにエンジンを止めロードサービスでレッカーを手配しましょう。

オーバーヒートは、他の故障と違って水温が上がるだけなので、すぐに車が動かなくなることはありません。

そのため、初期の段階ではオーバーヒートを起こしていることに気が付かず、ボンネットから白い煙が立ち込めたり、アクセルを踏んでも加速しなくなったり、重症な状態になってしまうことがほとんどです。

少しでも違和感を感じたら、まずは車を停めて水温やエンジンルームを確認するようにしてください。

新しい車はオーバーヒートを起こしにくい

昔の車はラジエーターの容量が小さく、エンジン回転を利用する機械式のファンが主流であったため、効率の良い冷却ができずにオーバーヒートを起こしやすい構造でした。

現代の車は電動ファンが主流となっており、水温に応じて自動的にファンを回すことができるため、安定した冷却が可能です。

しかし、現在の中古車市場では、まだまだ年式の古い車も多く出回っていますし、輸入車などは国産車に比べて部品の質が悪く劣化も早いため、オーバーヒートを起こしやすい傾向にあります。

もし年式の古い車や輸入車に乗っているようでしたら、オーバーヒートには日頃から注意するよう心掛けてください。

記事の管理者
鈴木自工メディア担当者

鈴木自工は車検のコバック、新車販売のジョイカル、車買取専門店アップルを運営する総合カーディーラーです。

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