法定12か月点検は受けたほうがいい?半分以上は実施していないのが現実

12か月点検

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車の法定12か月点検とは、その名称の通り法律で定められている12か月周期での実施が義務付けられた、自家用車の保安・安全点検(整備)のことを指します。

国土交通省と自動車関係団体で構成される自動車点検整備推進協議会の調査によると、法定12か月点検を「必ず実施している」と答えたのは46.6%。

道路運送車両法で義務付けられてはいるものの、車検とは違い罰則がないため、実際には半数以上の人が受けておらず認知度も高くありません。

法定点検は車の用途によって種類分けされていて、乗用車は12か月点検以外にも車検と同時に実施する24か月点検の2つ。

中型トラックなどの貨物自動車は6か月点検が、バス・タクシー・レンタカーといった事業用車両には3か月点検がそれぞれ規定されています。

目次

法定12か月点検の項目一覧

法定12か月点検で確認するのは、使用頻度が高く劣化や不具合が発生すると安全に支障をきたしかねない、ブレーキ・操舵・足回り系を中心とした下記の29項目です。

点検項目チェック内容
制動装置
(ブレーキ関係)
ブレーキペダルの遊び
ブレーキのきき具合
パーキングブレーキの引きしろ・踏みしろ
ブレーキドラムとライニングのすき間、摩耗状態
ブレーキディスクとパッドの摩耗状態
ブレーキ液の量
ホース、パイプの漏れ・損傷・取付状態
かじ取り装置
(ハンドル関係)
ハンドル操作の具合
ギアボックスの取付状態
ロッドやアーム類の緩み・損傷
走行装置
(タイヤ・足回り)
タイヤの溝の深さ、摩耗、損傷
タイヤの空気圧
ホイールナットの緩み
動力伝達装置クラッチペダルの遊び、切れ具合
トランスミッションのオイル漏れ
プロペラシャフトやドライブシャフトの連結部の状態
原動機
(エンジン)
エンジンオイルの量
冷却水の量
ファンベルトの張り具合
排気ガスの状態(色、臭い)
燃料漏れの有無
電気装置バッテリー液の量
バッテリーターミナルの緩み・腐食
点火装置の配線状態
車体関係
安全装置
ワイパーの拭き取り具合
ウォッシャー液の量
ライト・方向指示器・ホーンの作動
シートベルトの損傷やねじれ、取付状態
下回り全般の緩み・損傷・油漏れ

12か月点検の目的を簡単にいえば、次回の車検との間に一度、車の安全性や部品の状態を確認することです。

車検から車検までの2年間を何もせずに走り続けるのではなく、中間のタイミングで不具合を見つける役割を持っています。

各部品の取付状態や作動を確認すれば、走行中の思わぬトラブルを防ぐことができますが、実際には時間や費用の負担から全ての人が実施できているわけではありません。

消耗品は性能が向上しており、オイル交換など一部を除けば「車検時の点検で十分」と考える人も多く、実施率が高くない理由のひとつになっています。

法定12か月点検は義務ではあるけど罰則は原則なし

結論から言えば、法定点検は道路運送車両第48条(定期点検整備)により規定されている、「運転者の義務」ですが法的強制力はありませんし、受けなかったときの罰則規定も存在しません。

車検の場合、合格していないもしくは期限が過ぎてしまった車は、公道を走ることを法律で禁じており、無車検車で公道を走行して検挙されると一発で免停となるため、ほとんどの人が車検の期限を意識しています。

法定点検も義務とはいえ、実際には「点検していません」というだけで済んでしまい、利用者の判断に任されているのが現状です。

法定点検が必要な理由

法定点検が必要な理由は、保安基準さえ満たしていれば公道の走行を認可する車検だけだと、多くの構成部品が連動して走行する車の安全性を年単位で維持することが難しいからです。

車を作る精度が格段に向上し消耗品は昔に比べて長持ちするようになりましたが、すべてのドライバーが整備に関する知識を持っているわけではなく、不具合に気づかないまま乗り続ける人も多いといえます。

法定点検は普段は見落としがちな細かい部分までプロの整備士が点検をおこないます。

例えばエンジンオイルの漏れや消耗品の摩耗は代表的です。

明らかに滴り落ちるほどのオイル漏れや、タイヤやブレーキパッドが摩耗して制動力が基準値を下回る車は、車検不合格となる一方で、滲み程度のオイル漏れや部品の摩耗があったとしても、検査基準の数値を満たしていれば車検は合格します。

形式的には車検に合格していても、消耗品や各部の劣化を見落とす可能性があるため、法定12か月点検を実施する仕組みが設けられているのです。

また、実際に点検を受けるとオイル交換や消耗部品の交換など軽整備で済むことが多く、低コストで大きな故障を未然に防げます。

結果的に高額修理を避けられたり、売却時に「整備記録簿あり」として査定額が上がったりすることもあります。

法定12か月点検の期限は?いつからいつまで?

法定点検の期日は、ディーラーや整備工場で点検を受けた際は点検記録簿に記載され、フロントガラスの左上に法定点検の期日が書かれたステッカーが貼られます。

点検を受ける日は必ず期限に合わせなければならないものではなく、期限前に受けることも可能ですし期限を少し過ぎたからといって断られることもありません。

法定12か月点検以外に、3か月や半年といった短い間隔で整備工場に持ち込みんで点検を受けることは問題ないどころか安全運転につながる素晴らしい行為ですが、毎回整備士に依頼すると費用はかさむため日常点検と組み合わせるのが現実的です。

点検ステッカーは有効期限を過ぎたら必ずはがす

点検整備済ステッカーの見本

24か月点検や12か月点検などの法定点検を受けると、フロントガラス左上に丸いステッカーが貼り付けられますが、有効期限を過ぎてもそのまま貼っておくと保安基準違反とみなされ、減点1点および反則金7,000円を科されることがあります。

有効期限内であれば問題なく貼り付けられますが、期限が切れた瞬間からは前方視界を妨げる違法な物とされ、スモークフィルムと同じ扱いになります。

点検を受けないこと自体には罰則がないのと同様に、ステッカーを貼らないことも違反にはなりません。

しかし、期限切れステッカーをそのままにしておくことだけが違反になるため、点検を受けたあとも期限が切れたステッカーはすぐにはがしておきましょう。

法定12か月点検はいくらでできる?平均的な費用は1万円前後

法定12か月点検の相場を整理しておくと、ディーラー系では10,000円~25,000円前後が相場となっており、車の大きさによる価格差はそれほど大きくありません。

点検費用は販売店によって異なりますがディーラーでの価格設定は以下のとおりでした。

トヨペット千葉14,410円
宮崎日産14,300円
ホンダカーズ愛知22,000円

※普通車、3ナンバーサイズ

ホンダは8千円ほど高い設定になっていますが、本来義務付けられている項目に独自の点検項目を加えており、36項目の点検をおこなっています。

オートバックスやイエローハットなどといったカー用品チェーンでは、店舗によって多少上下するものの8,800円~とリーズナブルなうえ、丸1日かかるディーラーと比較して、最短2時間で作業が完了するスピード感も魅力です。

イエローハット福岡南8,800円
ジェームス美浜8,800円
オートバックス東戸塚13,200円

※普通車、3ナンバーサイズ

ディーラーは時間がかかるぶん代車を借りやすいですが、カー用品店は短時間で完了するため代車の貸出はないものと考えておきましょう。

鈴木自工の運営するコバックでも12か月点検を受け付けていますので、まずはお問い合わせください。

法定24か月点検も、点検項目が道路運送車両法で定められているため、ディーラーで受けてもカー用品店やガソリンスタンドで受けても基本的に内容は同じです。

どの業者であっても、規定された項目を省略して点検することはなく、点検作業そのものが原因で不具合を引き起こすことは通常はありません。

そのため、点検作業の依頼先を選ぶ際は、料金や利用のしやすさで選ぶのも良いでしょう。

法定12か月点検を自分でやるのはおすすめできない

法定12か月点検は、分解をともなわない目視や外観の確認で実施できるため、整備士資格がなくても自分で点検すること自体は可能です。

しかし、十分な知識や経験がなければ不具合を見抜くのは難しく、据え付けられたリフトではなく簡易ジャッキで車体下部を点検するのは危険もあります。

もし点検中にブレーキマスターシリンダーなどの重要保安部品に異常が見つかった場合、分解整備は指定工場や認証工場でしかおこなえません。

ホイールナットを規定トルクで締め付けるためのトルクレンチや、整備工場に備わる点検機材がないことを考えると、個人で点検するメリットはほとんどないといえます。

結論!法定12か月点検は受けた方がいい

法定12か月点検は受けたほうがいいの?という問いへの答えは「受けたほうがいい」です。

理由は、車検の検査ラインだけでは車の不具合を見落とす部分があるからです。

12か月点検は、車検までのあいだに進む劣化を年1回の確認で早めに見つけて、必要な処置につなげるための点検です。

車検は保安基準への適合を確認する手続きで、ブレーキなどの重要保安部品を分解して摩耗や劣化を確認する工程は含まれていません。

いっぽう、ディーラーや整備工場の車検では、検査と一緒に法定24か月点検も実施されるのが一般的です。

車検と24か月点検は別の手続きですが、時期が重なるため実際には車検のタイミングで24か月点検まで済ませるのです。

ブレーキ装置やステアリング装置、ヘッドライト、シートベルトの状態確認など、重要保安部品の確認を含めた本格的な点検整備はこの時に実施されます。

法定12か月点検は、法的強制力や罰則が存在しないため「絶対に毎回受けるべき」とまではいいませんが、走行距離が多い人や年式が古い車をお持ちの人は受けておくのがおすすめです。

記事の管理者
鈴木自工メディア担当者

鈴木自工は車検のコバック、新車販売のジョイカル、車買取専門店アップルを運営する総合カーディーラーです。

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