CVTの故障は買い替え一択!その理由を現役整備士が解説

CVT故障は買い替え一択

更新日

CVTの故障は走行に支障をもたらしますし、最悪の場合は走行中に急に走行不可能になってしまうほどの重大な故障です。

修理をしようと思っても、ほとんどの場合は10万円以上の高額な費用がかかり、車種によっては同等の中古車が買えてしまうことも。

車を買い換えるにしても大きなお金が出ていくので判断に迷ってしまいますが、結論から言うとCVTが故障したら迷わず買い換えるのがおすすめです。

修理せずに車を売るなら、修復歴などがあっても査定してくれる中古車買取業者を選びましょう。

目次

CVTの故障は原因を特定しにくい

CVT本体の画像
画像引用元:TOYOTA

CVTの故障にはさまざまな原因があり、特定の車種において「このメーカーの○○は△△がよく壊れる」といった傾向があることも。

2015年~2025年の10年間におけるCVTリコールの数を、自動車メーカー別に調査したところ以下の結果になりました。

メーカーリコール件数
日産4
スズキ3
ホンダ1
ダイハツ1
三菱1
引用元:消費者庁リコール情報

自動車メーカーはCVT故障の詳しい情報を持っているので、修理するならトヨタの車であればトヨタのディーラー、ホンダの車であればホンダのディーラーに入庫するのが問題解決の近道といえるでしょう。

しかし修理費を抑えたい場合は、近隣の整備工場でリビルト品を使えば新品より安く修理することも可能です。

CVT本体内部の故障はアッセンブリー交換が推奨

CVTが故障する原因はいくつかありますが、一番多いのは金属ベルトやそれを挟み込むプーリーの摩耗で、これらが擦り減ると、走行中に大きな異音が出ることがあります。

また、ベルト自体が伸びてしまうことや、プーリーを動かすための油圧やモーターを制御するコンピュータに異常が起きると変速に支障をきたします。

走行中に車体の下から大きな機械音がしたり、加速時に滑るような感覚や強いショックが出たりすると、これらの部品に不具合があるといえます。

CVTの内部は非常に複雑で、現役の整備士であっても構造やそのはたらきを100%理解している人はほとんどいないのが実情です。

現在では多くの車に採用されている変速システムですが、非常に精密な構造になっています。

引用元:CVTEC 製品の仕組み

そのため、特定の部品が悪いところまで推測できても、分解できないためアッセンブリー交換となります。

CVT各センサーの故障なら1~2万円程度が目安

CVTのセンサーはプライマリー&セカンダリー回転センサー、油圧センサー、油温センサーなど複数あります。

これらのセンサーに不具合があると、誤った制御がおこなわれて加速不良や警告灯が点灯するといった症状が出ます。

CVTセンサーの故障は、専用の診断機を車両に接続したり、テスターを用いて電気信号流したりすることで判断します。

センサーは新品で1個あたり7,000円~13,000円程度なので、修理にかかる費用は比較的安くなることが多いです。

コンピューターのプログラム不良によるCVTの不具合

CVTには制御するためのコンピューター(コントロールユニット)があります。

制御プログラムのそのものの不良によるCVTの不具合は珍しい話ではなく、実際にメーカーからのリコールもありました。

無段変速機(CVT)において、CVTコントローラの制御プログラムが不適切なため、高負荷のキックダウン時等に、変速機構であるスチールベルトが滑り摩耗紛が発生する場合があります。

引用元:ハスラー、ワゴンRのリコールについて

プログラム内容を書き換えるリプログラミングで対応できる場合と、コンピューター(コントロールユニット)を交換する場合のふたつがあります。

CVT以外の故障が原因でCVT制御に影響が出ている

車は部品が故障したとき、危険やそれ以上の不具合が発生しないように、最低限の走行ができるようにコントロールする制御をおこなっています。

ドライバーはCVTに故障が起きてるように感じても、実際にはほかの部品が故障したことで起きてる症状の場合もあります。

CVTの動作に影響が出やすい故障箇所は、以下のようにエンジン関連、電気系統、冷却系、車体など多岐にわたります。

故障箇所CVTへの影響
スロットルセンサーアクセル開度が誤検知され変速タイミングが不自然になる
エンジン回転センサーエンジン回転数を正しく検出できずCVTに適切な変速指示を出せない
点火系や燃料系エンジン出力が不安定になりCVTが滑っている感覚になる
CAN通信受信ECUとの通信が途切れてフェールセーフモードに入り加速しない
電気系統ECUが誤作動を起こしCVTの制御に悪影響を与える
CVTフルード油温高いと滑るような症状があり低いと変速ショックが大きい
油圧制御バルブライン圧が不足してプーリーが正常に動作しない
車速センサー誤った車速情報により速度にあった変速比にならない

適切なCVTオイルが使用されていない

CVT本体内部の故障と少しかぶる部分もありますが、CVTのオイルは各メーカーごとに指定されている純正オイルを使用することが大前提です。

これを守らずにオイル交換すると、動力を伝達するベルトが滑ってしまうといったCVT本体内部の不具合や故障につながる可能性も。

CVTオイルには内部の潤滑や冷却の機能があるため、長期間交換していない場合は、乗り心地に違和感を感じるだけではなく、内部の故障につながります。

ただしCVTオイルの交換について、自動車メーカーは積極的ではありません。

一部のディーラーでは原則無交換としながらも、過酷な環境で使用した場合は指定のオイルで交換を推奨しています。

「シビアコンディション」(注)での使用に該当する場合は、CVT車であっても4万km毎の交換が指定されている

引用元:東京スバル

精密部品の集合体であるCVTは、走行距離や車種によって不具合を起こす可能性もあるので、専門知識のある整備工場や、車に備え付けのメンテナンスノートを見て交換時期を確認してください。

CVTオイル漏れ

ガスケットやパッキンの劣化や不具合によってオイルが漏れて、CVTが必要とするオイル量が足りなくなると、CVTが正常なはたらきをしなくなります。

これは、CVT内部で作動する部品の中にオイルの油圧を使用しているものがあるためです。

オイルには部品の潤滑、冷却の役割もあるので、オイル量が足りてない状態で走り続けると、最悪の場合はCVT内部が焼き付いて高額な修理費用が必要になります。

少しでもオイル漏れが疑われるのであれば、早めに点検を受けるようにしましょう。

また、異常箇所の早期発見には、以下のような定期的な点検もおすすめです。

CVT故障の症状は発進時の振動

CVTはエンジンの力を適切な力に変換してタイヤへと伝える重要な動力源です。

CVTが故障したときの症状は先ほど紹介した原因によってかわってきますが、素人には症状と原因を結びつけるのは困難です。

CVT故障の症状一覧
  • アクセルを踏んでも思うように加速しない
  • エンジン回転だけが上がって加速しない
  • 走行中に停まってしまう
  • 意図しない加速や減速が発生する
  • クリープしない
  • 前進できない
  • 後退できない
  • シフト操作したときの変速ショックが大きい
  • CVT内部から異音が発生(ガラガラ音など)
  • 発進時や加速時、減速時に車体振動(ジャダー)が起きる
  • エンジンチェックランプが点灯

これらのいずれかでも身に覚えがあるのであれば、CVT関連の故障が疑われます。

最悪の場合、走行不能になってしまうこともあるので、すみやかに整備工場に入庫して故障修理・メンテナンスのプロに相談しましょう。

走行中に走行不能になるようにことがあれば自分にとっても危険ですし、周りの交通状況に多大な迷惑をかけてしまうことになりかねません。

CVT故障の具体的な症状例(ジャダーが出る事例)

CVTの故障で有名なもののひとつで、ホンダのフィット(初代)はCVTのジャダーと呼ばれる不具合例が多数報告されています。

友人が乗っていた初代フィットは、発進時にラフなアクセル操作をしたときのみ0~30km/hまで車体の振動(ジャダー)が酷く、乗っていられないほど不快なものでした。

初代フィットに採用されている湿式多板クラッチ式CVTは、クラッチ板の間に鉄粉が混じることにより発進時の伝達不良を起こすのが原因です。

加速そのものは問題なく30km/h以降は振動もおさまり、ゆっくりアクセルを踏み込めば症状は出ませんでした。

当時、保証修理でCVTの載せ替えをしたのですが、その後症状が再発。

さすがに2回目は…と、走行そのものには問題はなかったために、修理を諦めて乗り続けていました。

CVTが故障する前兆は?

CVT警告灯が点灯する

エンジンチェックランプが点灯するような故障は、前兆もなく突然チェックランプが点灯することがほとんどです。

その瞬間に異常な振動や異音が発生する場合もあれば体感できない場合もあります。

加減速に影響を及ぼすCVTの故障や異音・振動の発生は、徐々に症状が大きくなっていくことがほとんどです。

はじめのうちは不具合が発生していても気づきにくく、故障の前兆をつかむことは非常に難しいといえます。

現役の整備士であっても気づけないことがあるので、先ほど記述した症状一覧の項目に該当する場合は既に故障していると考えていいでしょう。

故障の程度によってはいつ止まってもおかしくないため、早めにプロに診断してもらうことをおすすめします。

走行中にCVTが故障したときの対処法

走行中に変速しなくなったり加速が鈍ったりなどCVTに異常を感じたら、路肩やサービスエリアなど安全な場所に減速して停車しましょう。

停車後はPレンジに入れてエンジンを止め、症状が悪化するのを防止します。

違和感がなくても警告灯が点灯した場合は、そのまま走り続けず確認のために一度停車するようにしてください。

警告灯の色は、国際規格(ISO)で「赤色」「黄色」「緑色」の3色に決まっており、赤色は危険であることを示しているので、すぐに停まる必要があります。

黄色は緊急度が低いものの異常があることには変わりないので、できるだけ早く点検を依頼しましょう。

車が急に壊れるとパニックを起こしやすいですが、まずは落ち着いて自動車保険に付帯するロードサービスやJAFに連絡し、整備工場やディーラーへのレッカー搬送を依頼します。

修理を依頼する際は「変速しない」「大きい金属音がする」「警告灯が点灯している」など具体的な症状を伝えると、修理の取り掛かりが早くなります。

CVTの修理費用は?交換になると30万円以上かかる

CVTの故障は修理費用、交換費用が高額になるケースがほとんどです。

本体ではなく、周りの部品・センサー類の交換やオイル漏れ修理等で対応可能なら、1万円~10万円以内の修理費用でおさまることも。

CVTの修理費用は、おおまかに下記の3つに分けられます。

作業内容費用
CVTの周りの部品を交換部品代は高いが工賃は比較的安い
オイル漏れ等の修理部品代は安いが工賃が高い
CVT本体を交換部品代も工賃も高い

CVT本体を交換する場合は非常に高額になり、車格やエンジン排気量が大きくなるにしたがって価格は高くなります。

しかし、必ず新品に交換するというわけではなくリビルト品や中古品を選べることもあるので、修理工場と相談しながら進めましょう。

CVT修理の違い

CVT本体の価格や耐久性の比較を以下にまとめました。

スクロールできます
新品リビルト中古
価格高い普通安い
耐久性新車と同じ壊れにくい壊れやすい
作業時間普通普通調達が遅い
CVT本体の比較

中古車販売・買取サイトのグーネットでは、全国の整備工場でおこなわれたCVTの交換実績とレビューを公開しています。

車種別に180件以上のデータが掲載されているので、CVT修理の予算を知りたい人は一度確認してみてください。

新品交換にかかる費用

新品のCVTはもっとも高額です。

軽自動車でも10万円~30万円、一般的な国産の普通乗用車であれば30万円~60万円ほどかかります。

外車や特殊な車は100万円を超えることも珍しくありません。

現実的ではない修理費用に驚かれるかもしれませんが、メーカーから発送される新品部品とだけあって信頼性が高いことは違いありません。

故障が多い車種ならば、対策品に交換することも可能です。

リビルト品への交換費用

リビルト品とは、いったん使われた車の部品を分解・洗浄し、傷んでいる部分を直したり新品の部品に取り替えたりして、新品に近い状態にオーバーホールされたものです。

実際の現場ではこのリビルト品のCVTを使った修理がもっとも多いといえます。

その理由は信頼性のあるオーバーホール品でありながら部品代を安く抑えることができるからです。

新品と比べてかかる費用は半分程度におさえられることも。

軽自動車だと15万円前後、一般的な国産の普通乗用車であれば15万円~40万円がリビルト品への交換費用の目安です。

中古品で交換するのにかかる費用

とにかく費用を安く抑えたい人には、中古品のCVTを使用するという選択肢もあります。

実際にオークションサイトを調べてみると、3万円~15万円台で中古のCVTが販売されていました。

中古品はリビルト品とは異なり、元々ついていた車から取り外したそのままのもので、メンテナンスされていない状態のCVTです。

元々がどのような状態・メンテナンス履歴であったのか不明なので、交換直後にまた壊れることもあり、ひどい場合は、そもそも故障したCVTである可能性も否定できません。

中古品への載せ替えは、安ければ数万円でCVTを交換できる方法ではありますが、リスクのある修理方法といえるでしょう。

現役整備士としてはおすすめできない修理方法です。

CVTのメーカー保証があれば無償修理が可能

CVTが故障したときは、まずあなたの乗っている車がメーカー・ディーラーが定める保証の対象内であるか確認しましょう。

自動車メーカーが用意する保証には、新車から3年または6万kmまでの「一般保証」と、5年または10万kmまでの「特別保証」の2種類あります。

一般保証は電装品等を中心とした保証で、特別保証は「走る・曲がる・止まる」の車の重要な3つの要素に関わる保証です。

CVTは5年または10万kmの「特別保証」に該当し、期間内であればユーザー側に過失がない限りは保証によって修理してもらうことができます。

特別保証
クルマを構成する部品のうち、走行性能や安全性能、環境性能に関わる特に大切な部品が対象となります。

引用元:HONDA

また、メーカー保証なので免責を支払うこともありません。

新車から5年または10万km以内でのCVTの故障であれば、ひとまず修理費用を心配する必要はなさそうです。

メーカーでCVTの故障が多いと判断された車種は、保証期間を自動的に延長している場合があります。

旧型N-BOXなど14車種の無段変速機ドリブンプーリーベアリングの保証期間延長

引用元:HONDA 四輪車の情報

自分の車がCVT故障の多い車種だと分かったときには、自動車メーカーのサイトで故障情報を確認しておきましょう。

延長保証加入で5年目以降の出費に備える

各メーカーには延長保証プランが用意されています。

CVTの故障は、新車から5年目の車検時に加入できる延長保証プランに入っているかどうかもポイントです。

延長保証プランは加入条件として以下の2つを定めているメーカーがほとんどです。

  • 3年または6万kmの一般保証を5年または10万kmに延長するプランに加入済
  • 車検を含めた法定点検などのメンテナンスで正規ディーラーを利用している

トヨタのお店では車検と同時に加入できる延長保証をご用意。わずかな費用でさらなる安心をお届けします。

引用元:トヨタ 保証がつくしプラン(車検コース)

中には走行距離が10万km未満でなければ加入できないといったルールのメーカーもあります。

延長保証プランに加入すると、「7年または14万km」や「7年距離無制限」の延長保証を受けることができます。

延長保証プランはメーカーによって微妙に異なるので、ディーラーの担当者に内容を確認しておきましょう。

年数、走行距離が増えてCVT故障のリスクが高まる中で、延長保証に加入していることは大きな強みになります。

CVTが故障した車を高く売る方法

CVT故障車はネットの一括車査定で売却するのがおすすめです。

車に愛着がある人であれば、そのままCVTの修理に出すのもいいと思いますが、車を乗り換える機会だともいえるでしょう。

一社だけの査定だと、故障している車ということで足元を見られたり、タダ同然で買い取られたりする可能性があるからです。

車買取店の中には、CVTが故障していると値段がつかない業者がいる一方で、壊れていても部品取りとして高く買取してくれる業者や独自の販売網があるので高く買取できる業者が存在します。

ただし、CVTが壊れていることは申込時や電話連絡の時点で伝えるようにしましょう。

記事の管理者
鈴木自工メディア担当者

鈴木自工は車検のコバック、新車販売のジョイカル、車買取専門店アップルを運営する総合カーディーラーです。

記事内容についてのご質問等は当社の問い合わせフォームにご連絡ください。

目次